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愚痴③

 さて、女とはとかく不便なものだ。女といっただけで、望まぬ装飾を、あれとあれと貼り付けられるものであるのだから。

 男と同じように、はい勉学に苦しんでいます、はい孤独に苦しんでいますと言っても良くない。当人がどれだけ乾いた心地で言ったとしても、外から見れば、妙に湿っぽくなってしまうものだ。メンズの格好をしたところで、これは避けられない。当人の抗いなど、チリみたいなものだ。人はそこに、どうやったって、湿り気を見出す。たとえ、ジェンダー意識の高い者であっても。先人たちの積み上げてきたステレオタイプとはなんと罪深い。ああ、そうだな、この湿り気こそが、私が最も忌避するものかもしれないな。

 それに私は、純粋な女というわけではないのだ。いや、本当は、純粋な女という言い方には重大な倫理違反が含まれるのだが、しかし、当事者という看板を掲げることで、なんとか免除してもらおうと企んでいる。私は、トランスジェンダーというやつなのだ。

 トランスと言っても、男になりたいだとか、本当は自分を男だと思っているだとか、そういう感じではない。私の自意識は、そんな、簡単な物語に乗れるようなものではないのだ。だからといって、私は他のラベルを採用する気もない。分類は私の趣味ではない。せいぜいシス女ではないくらいのことしか言えないし、言うつもりもない。

 私はもっと、人間の根源的な孤独や欲求について語りたいのだ。しかしどうだ。私が性別を明かさずにそんな話をすれば、多くの人間は、髭の生えた丸メガネの中年男を思い浮かべるだろう。太宰風の物憂げな男かもしれない。あるいは、気取った苦学生でもおかしくない。そんなところに、わざわざ私のような人間が、属性を掲げて名乗りあげれば、何が飛んでくるであろう。

「わざわざ主人公を女にする意味は?」

 それだけだ。


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