恋人のやり方がわからない 11
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四時間目の授業が終わると、悠介くんはお弁当を持って、私の向かいに座りました。
久しぶりに、悠介くんと向かい合って座ります。
「……」
「……」
「……なんか、緊張しちゃうな」
つい、声が出てしまいました。
「……俺も」
そう言って悠介くんは、ほんのりと顔を赤くさせました。
……前々から思っていたけれど、この人は肌が白いから、赤くなるとすぐにわかってしまう。
……。
悠介くん復帰早々、何を考えているんだ!
急に恥ずかしくなり、私の顔はじわじわと熱くなってきてしまいました。多分、赤くなっているのはバレバレでしょう。遠くから「りっちゃん先生がんばれ〜!」と声が聞こえてきますが、なんですかそれ、やめてください!
私は頭を必死に回転させて、無難な話題を探しました。その結果出てきたのは、「今日も一緒に帰る……?」だなんて、あまりにつまらない確認でした。悠介くんは小さく目を見開いて、「そのつもりでいたけど……」と言い、私は「だ、だよね!」と、微妙に裏返った声で返しました。
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放課後になると、私は急いで荷物をまとめて、悠介くんの元へ 行きました。別に急ぐ理由もなかったのですが、なんとなく、そうしていました。
「ゆっ、悠介くん! 俺、もう帰れるよ!」
「俺も今準備できたとこ。行こうぜ」
そうして私たちは、並んで教室を出ました。廊下では「今日どうする?」という話をし、悠介くんの提案で公園に行くことになりました。悠介くんの家も一瞬だけ候補に挙がったのですが、悠介くん曰く「俺の家にはまだ風邪菌がいるかもしれねえ」とのことで、却下されました。さらに公園に着くまでには、りっちゃん先生になった経緯をもう一度説明し、もう一度、二人で首を傾げました。
「ねぇ、またアイス買おうよ」
公園に着いて、私は自販機を指差しました。
「いいな」
悠介くんは小さく笑いました。
「今度は俺が、悠介くんと同じの買ってみようかな」
「じゃあ俺が先に選ぶのか……」
「選ぶの苦手?」
「好きな味ねえからな……この前のチョコはうまかったけど」
そう言うと、悠介くんは顎に手を当てて宙を見てしまいました。私はちょっとだけ面白くなり、
「じゃあ俺が選んであげようか」
と、冗談のつもりで言ってみたのですが、悠介くんは、
「いや、自分で頑張る」
と言い、
「頑張る……!?」
と、私の方が逆に目をパチパチさせることになりました。
自販機前に立った悠介くんは、やはり、妙に堂々としていました。
そうして悠介くんは、結局一分ほど迷った末に、「まあ、これでいいか」とぶどう味を選んだのですが(前にもぶどうを選んでいませんでしたか……?)、私が同じくぶどう味のボタンを押すと、なぜか満足げな顔をしていました。
「どっか座りたいね」
「ああ……」
そう、見回すと、二つ並んだブランコが空いているのが目に入りました。
そういえば前に、高校生のカップルが隣同士のブランコに座ってるの、見たことがあったな……。
……。
「悠介くん、あそこに座らない?」
私はブランコを指差して言いました。
「今は子供があんまりいないし、俺たちが使っても大丈夫だと思うんだけど……」
「お前、そこ心配するんだな」
「あ、いや、一応……」
「いいと思う。座ろうぜ」
そう言って悠介くんはズンズンと歩いていくと、「小学生ぶりだな」と呟きながら、すっと座りました。続いて私も座ると、腰掛けた瞬間、ブランコからギッと大きな音が鳴りました。
「なんで悠介くん、そんなに静かに座れるの……?」
「なんでだろうな」
本人は首を傾げていました。
「まあ食おうぜ」
「うん」
頷いて、アイスを一口口に含むと……普通に、甘い味がしました。普通のアイスです。でも、美味しいものは美味しい。
「……悠介くん、これ、美味しいね」
私が横を向いてそう言うと、悠介くんは「ああ」と頷きました。
心なしか、さっきよりも満足げな顔をしている……!
急に、胸のあたりがほかほかとしてきて、私は意味もなく小さくブランコを漕ぎました。悠介くんは可愛いし、アイスは美味しいし、ブランコは楽しい。チラと隣を見ると、悠介くんはさっきよりももっともっと満足げな顔をしており……逆に恥ずかしくなって、私はブランコを止め、コホンと一つ咳払いをしました。
いつの間にか悠介くんは、アイスを食べ終えていました。私も最後の一口を食べ終えると、悠介くんはそれを待っていたかのように、「あのさ……」と口を開きました。
「ん?」
「そういえばなんだけどよ……」
「うん」
「お前って、俺たちが付き合ってること、周りに言ったのか……?」
「周り……?」
「なんかお前、急に周りと喋るようになってたろ……だから……」
女子たちのことでしょうか。
悠介くんは小さく首を傾げて、こちらを見ていました。そこに何かを責めるような雰囲気は、特にありませんでしたが……。
私にはわかります。これは、ちゃんとした話です! ちゃんと、言っておかなければなりません!
「いや、言ってないよ!」
私はちゃんと、否定しました。それから説明します。
「俺は知られても知られなくても、どっちでもいいんだけどさ、でも、悠介くんに確認取る前に勝手に言うのはどうなのかなって、思ったから……」
「そうなのか……!」
「だからみんなには『秘密』って言っといた!」
「秘密……?」
「そう。否定も肯定もせず……みたいな!」
「……それ、ほぼ言ってるようなもんじゃないか?」
「……」
ギッと、ブランコが軋む音がしました。
「……あ、そ、そうだったかな……?」
「秘密は、だいぶ言ってるようなもんじゃね……?」
「うそ……?」
「多分……」
……。
うそ!?
つまり私は、皆に隠しているつもりで、実は悠介 くんとの交際宣言をして回っていた……!?
そんなの、もう、両手で顔を覆うしかできません。
「ああ〜〜〜っ、ごめん、悠介くん……」
「いや別にいいって……俺、みんなに付き合ってること知ってもらえる方が嬉しいし」
「そうなの……?」
「いやなんか、そのほうが……俺たちの間に、こう、割って入ってくる奴が出なそう、みたいな……」
「……!?」
「今俺恥ずかしいこと言ったか……!?」
「わ、わかんない……!」
私は少しだけ両手を外しましたが、すぐに耐えられなくなり、また両手の中に沈んでいきました。
悠介くん、そんなこと思ってたんだ……。
「律は……?」
「え……」
私は両手から少しだけ顔を離して、チラリと悠介くんを見ました。悠介くんはやけに真剣な顔をしていて……。
「その、律はよ……」
「うん……」
「俺たちのこと、言いたいか……?」
「えっと……」
私は両手を下ろして考えました。
どうだろう。
……。
「悠介くんが言いたいなら、俺も言いたい……かな……」
「なんだそれ……」
「多分俺……どっちかって言うと、かなり言いたいかも……」
「そうなのか」
「友達……って言っていいかはわかんないけど、最近よく喋る女子たちがいて……」
「……ああ」
「あの子たち、俺たちが付き合ってるって知ったら、喜んでくれると思うんだよね……まだちょっとしか喋ってないけど……」
「ああ……」
「それで、俺と悠介くんが付き合ってることが喜ばれるって、普通に良いことな気がする……」
「律……」
そこまで言って、私は照れてしまい、俯いてしまいました。
ギィと控えめにブランコが鳴る音がしました。悠介くんのブランコでした。
「お前、そう思ってくれてたんだな……」
悠介くんは、どこか嬉しそうな声で言いました。
「つってもあの女子たちは、もう知ってると思うけどな……」
「あっ、それはっ……うん、そうかも……」
私はこれまでの挙動の数々を思い出して、カッと顔が熱くなりました。自分が何をしてきたか、全くわかっていないほど、私は愚鈍ではないつもりでした。
「でも、秘密って言うのと、付き合ってますってちゃんと言うのじゃ、全然違うから……」
私は何か弁解するように言いました。それでも悠介くんは、
「そうだな」
と優しい声で言ってくれました。
「明日、言ってみようかな」
「明日は休みだぞ」
「あっ……」
今日、金曜日……。
「まあ、ゆっくりやってこうぜ」
「うん」
そう言うと悠介くんは、小さく笑いました。
あ、また笑顔だ……。
53
土曜日の昼、私はベッドに寝転がって、スマホを凝視していました。
どうやら世間には、デートというものがあるらしい。
今朝のテレビの特集でやっているのを見て、ああそういえば、そんなものがあったなと思ったのです。
なら、悠介くんとやってみたら……。
……。
いや、いいのかそんなことをして?
……。
いや冷静に考えて、ダメな理由の方がないはず……多分。
コンビニに行くだけで、あんなに楽しかった。
公園にいるだけでも。
それならもっと遠くて変なところに行って、もっと変で、新しくて、可愛い悠介くんを見られたら。
もっと、一緒の時間を過ごせたら。
……なんていうのは、望みすぎでしょうか。
……。
……考えるだけなら、いいですよね?
私は「デート」「おすすめスポット」と検索し、出てくるページを次々と見漁りました。
「いやまだ、デートするなんて決まったわけじゃないけど……」
そうです、そもそも悠介くんと、デートの話など少しもしていません。
でも、もし、二人で外に行って、手を繋いで、一緒に何かを見たり、一緒に何かを食べられたり、何か楽しいことができたら……。
……。
「悠介くん、何が好きなんだろう……」
あの人、好きな食べ物すらわからないんだよな。
「水族館あたりが無難かな……」
水族館。かなりいい気がする。
「遊園地とかは……ちょっと、俺が恥ずかしいかな」
悠介くんがはしゃぐところは、見てみたい気もするけれど……。
「プラネタリウム……そういうのもあるのか」
これも結構、ありじゃない?
「美術館、神社、大きめの公園……」
俺は好きだけど……悠介くんは?
「『おすすめのランチは!』……急にランチ出てきた」
でもまあ、そうだよね。ランチ、大事だよね。
うん……。
などと、悩んでいたら、いつの間にかA4三枚の長大な資料が出来上がっていました。
「行きたいところの候補とメリットを並べただけなのに……!?」
……。
とりあえず、悠介くんに見てもらいましょうか。悠介くんもまあまあ変な人ですから、このくらいで引いたりはしないでしょう。
「あ、その前に、悠介くんがデート行きたいか確認しないと……」
つい私の欲望が先走ってしまいました。そもそも悠介くんがデートに行きたいのか……それが一番重要でした。ですがラインを開いた瞬間、気がつきました。
これ、本当に聞いてもいいのかな。
いきなりデートだなんて、引かれないかな。
……最初は考えるだけなんて、言っていたのに。
「……」
でも悠介くんなら、受け止めてくれるかな。
いや、それは期待しすぎなのかな。
……。
私はアプリを閉じました。代わりに絵用の青いノートを開きました。しかし集中できず、今度は文庫本を開きました。ですがそれもダメで、次は物理の参考書を開きました。けれどどうにも落ち着かず、身体がソワソワして、何もかもが手につかなくて……。
私はラインを開いて、打ち込みました。
よければ今度、デートしない?
……と。
それから深呼吸して、いいよね、いいよね、誤字はないよね、本当におかしくないよねと、何度も読み返して、七回ほど読み返したところで、えいやっと送信ボタンを押しました。
……。
送ってから、「デートしない?」ではなく「おでかけしない?」の方がよかったかもしれないと後悔しましたが、私が送信取り消しするよりも前に既読がつき、
「いいよ、俺もしたい」
と返ってきました。
54
次の月曜日、私は上機嫌で、ふんふんと鼻歌を歌いたくなるのを我慢しながら登校しました。カバンには新品のクリアファイルと、A4三枚の印刷した資料が入っていました。いつもより少しだけ、カバンが重い気がします!
教室に入ると、すでに悠介くんは席にいました。悠介くんはすぐに私を見つけて、小さく控えめに手を上げました。私は手を振ると、 早速荷物を置いて、クリアファイルとともに悠介くんの席に向かいました。悠介くんは立ち上がりかけていましたが、「そっち行くよ」と私が言うと、そろりと座り直しました。
「あ、りっちゃん先生だ。おはよ〜」
途中で女子に「おはよう」と手を振り、それから、悠介くんに向かってもう一度、「おはよう」と言いました。
「お前、女子と馴染んでるな」
「えっ、そう……?」
「なんか見てて微笑ましい」
「微笑ましい……!?」
「なんか、かわいい」
そう言って悠介くんは、頬杖をついてふっと笑いました。なんですかそれ……!
「それより、その紙……」
「ああ、 これ、印刷してきた資料だよ」
「資料……!?」
「ちょっと楽しくなっちゃって、いっぱい書いちゃったんだけど……でも、遊びに行く場所の候補とメリットまとめただけだから……」
「すげえ……!」
悠介くんは珍しく、わかりやすく目をキラキラさせていました。もしかして、仕事ができる人間だと思ってもらえた……!?
私は飛び上がりたくなるのを必死に抑えて、控えめに「えへ」とだけ笑うと、紙を出して、指差しながら、水族館、遊園地、プラネタリウム、美術館、神社、公園、動物園、ショッピングモール、食べ歩き、猫カフェ……と、順に説明していきました。悠介くんは真剣な顔で聞いてくれ、時折、「これいいな」「やってみたい」「こんなのもあるんだな」とコメントしてくれました。
喜んで、くれている……!?
「っ〜〜〜!!」
ああ!! 嬉しい!!
「なんか、全部楽しそうで迷うな……」
「そっ、そうだよね……俺も、どれがいいか決められなくて……」
「全部やろうぜ」
「えっ」
なんですかその提案。
「そんな贅沢なこと、いいの?」
「いいだろ、俺は全部やりたいけど」
……。
いいんですか、そんなこと!?
「リスト、すごい長いけど……」
「別にいいだろ」
「悠介くんがいいなら……俺もやりたい」
「じゃあまずは一番上の、水族館から行くか」
「うっ、うん!」
「あとさ……」
「うん?」
「俺も一応考えてきたんだけど……」
「……?」
そう言うと悠介くんはポケットからスマホを取り出し、少しばかり操作して、
「これとかどうかと思ったんだけど」
と、デカデカとしたホイップと大量のチョコレートソースがかかった、可愛らしくも凶悪なパンケーキを出してきました。赤いベリーも乗っていて、下側のパンケーキなんかは黄色くふんわりとしていて、正直、かなり美味しそうです。
「こ、これって……?」
「パンケーキ」
「それは見ればわかる……」
「なんか有名な? カフェのやつで、期間限定らしくて……」
「へぇ……」
「お前チョコレート好きだったよなと思って……」
「うん……」
「あとこれ、店の画像。なんか雰囲気もよくねって思って……」
「うん……!」
「どうだろ……?」
「うん……!!」
ああ悠介くん、あなたはなんて人なのでしょう!
「俺、これすごく行ってみたい……!」
「本当か……!?」
そう言うと悠介くんはパァッと顔を輝かせて、ほんのりとほっぺを赤くさせました。か、かわいい!?
「じゃあ最初のおでかけは、パンケーキと水族館にしよ!」
「ああ、そうだな」
悠介くんは、小さく笑いました。ああ……嬉しい!
「これ、おんなじ日に両方行くのか?」
「忙しいかな?」
「いや、わかんねえ……」
「女子たちに聞いてみたらわかるかな……」
「女子?」
「いや、聞ける人があの人たちくらいしかいないから……」
「ああ……」
「あ、でも、今すごいおしゃべりしてる……邪魔しない方がいいかな……」
「多分大丈夫だろ」
「そうかな……?」
そう言いながらチラチラと彼女たちの方を見ていたら、そのうちの一人と、バチンと目が合ってしまいました。するとその女子はニヤリと笑い、「りっちゃん先生と五十嵐くんがなんか見てるよ〜」とヒソヒソ(というには大きな)声で言い始めました。
バレた!
私は反射で顔を背けましたが、背けた先の悠介くんは、「なんか聞けそうじゃね?」などと言っており、結局、私たちは女子たちのところに突撃することになりました。私が前を歩き、悠介くんはのそのそと後をついてきます。
「あの、邪魔してごめんなんだけど、ちょっと、相談があって……」
私がそう言うと、彼女たちは「え、なになに?」「 五十嵐くんいるんだけど、やば」「いいけど〜」と一応興味を示してくれ……パンケーキと水族館は同日に実行可能なのかを聞いたら、「え、どの水族館?」「あそこめっちゃデカいよ」「無理じゃない?」と笑いながら言われました。
「ていうか、何? りっちゃん先生、五十嵐くんとデートすんの?」
一人の女子が、からかうように言いました。他のみんなも、ニヤニヤとしています。
「あっ、その……」
私は耳まで熱くなり、何も出ず……しかし悠介くんは平然と、
「そうだけど」
と言い、女子たちの目をまんまるにさせました。女子たちは皆揃って、「わーぉ」などと言っています。
なんですかその反応は!
「あっ、そうだ、俺たち付き合ってんだ」
ついでの用事のように、悠介くんは、サラッと突然言いました。
そんな、突然言う!?
確かに、言っていいよと話はしましたが!
女子たちはといえば、「キャ〜」「おめでと〜」「かわいい〜」などと言い始めます。小さく拍手をしている女子もいます。涙ぐむジェスチャーをする女子もいます。
なんですかそれ! みんな揃って、なんなんですかそれ!
「りっちゃん先生、顔真っ赤〜」
知ってます!
「我らがりっちゃん先生、お幸せに……」
涙ぐまないでください!
「ねぇもうアレした?」
きっ、聞くな!!!!!!!
そんな折にホームルームのチャイムが鳴りました。助かった、本当に助かった。悠介くんの「またな」にも女子たちの「またね〜」にも、「うん、またね」と答えましたが、その声は自分でも驚くほどぶっきらぼうなものになっていました。
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お弁当の時間、いつものように、悠介くんはお弁当を持ってやってきました。そうして小さな声で、
「朝の大丈夫だったか?」
と聞いてきましたが、私は、
「大丈夫……みんなおめでとうって言ってくれたし……」
と、答えました。あんな感じではありまし たが、祝福は祝福ですし……。
……まあ、それはいいのです。
私と悠介くんはお弁当を食べながら、早速、デートの予定について話しました。女子たちの助言通り、行くのはパンケーキか水族館のどちらか片方だけです。どちらを最初にするのがいいだろう……というところが決まらなかったので、結局はジャンケンで決めました。私が勝ったらパンケーキにするという謎のルールです。そうして結局私が勝ったので、最初のおでかけはパンケーキになりました。
「予約ってした方がいいのか?」
「できるならした方がいいんじゃないかな」
「お、ここから予約できる」
「あ、じゃあ、しちゃおう」
悠介くんのスマホを覗き込みながら、二人で予約の操作をしていきます。
「本当に人気なんだね、ほとんど埋まってるよ」
「俺らギリギリだったんじゃね?」
「そうかも……」
ふと目線をあげると、いつものお弁当より、ずっと近くに、悠介くんの目がありました。
まつ毛、長い……。
綺麗……。
「……ん? どうした?」
「あっ……!」
私は急いで、パッと顔を離しました。
「ごめんなんか見ちゃった!」
「あ、おう……」
「なんか近くて、綺麗だなって……」
「え……」
「だってほら、キスの時はそれどころじゃなくて、悠介くんのことちゃんと見られるって感じじゃなかったから……」
「おい」
「?」
「学校でその単語はまずいぞ!」
「あっ」
私が咄嗟に周りを確認しようとすると、「見るな」と悠介くんから強い制止がかかりました。
「今見たら、終わるぞ……!」
「う、うん……!」
何それ……と思いつつ、意味はちゃんとわかっていました。要は今、周りはキスという単語に驚きの目を向けており、その視線に耐えられるか? といえば、きっと私は耐えられない。だからそもそもその視線の存在を見なければいいということです。……ですよね、悠介くん!?
であれば、今は悠介くんだけに集中するのです。悠介くん。今、私は、悠介くんだけの世界にいるのです。
……。
今の、相当にロマンチックでは?